10月に行われた総会からの報告です。会では、メッセンジャー力の向上を目指したフォローアップセミナー「ロールプレイ」が行われました。
ロールプレイではセミナーの講師たちが事例の登場人物を演じ切り、その後に参加者との検討会が行われました。メッセンジャーナース認定協会の吉田和子さんは、こう振り返っています。
「演者が事例の人に成り切り、見ている参加者の多くが涙していたのが印象的でした。『本人・家族のこころの風景』を察していく上で、誰もがロールプレイを体験し、学んでいけるセミナーが大事と改めて心新たにしております」
担当された小濱智代子さんは冒頭、ロールプレイの意義を語りました。訪問看護師は一人で活動することが多いため、「独りよがりになっていないか、自分がここで止まてしまうんじゃないか、慢心になるんじゃないのか」と自問することが多いのだそうです。こうした問いに小濱さんは、「事例を積まないといけない」と感じ、機会があるごとに事例検討セミナーに参加されました。その思いが、今回の総会でのフォローアップセミナー「ロールプレイ」の実現につながっているのでした。
事例は、癌を患っている80代の女性です。ご主人と二人暮らしですが、二人の娘さんに支えられて自宅療養を続けています。ご本人は、自身のお母さんとご主人のご両親の介護経験があります。そのため、介護の大変さを身をもって体験している方です。
ロールプレイは、亡くなる1週間ほど前に、訪問看護師が訪れた場面です。
いつもと様子が違う次女が、こう話しました。
「幼馴染の訪問看護師さんに話したら、寝かせる薬もあるけどって言われたんです」。
訪問看護師は、なぜそんなことをいうのか考え、次女の思いに心を寄せていきます。
すると、「自分は夕方から来て、朝、やってくる訪問看護師さんと交代する時間まで、お母さんのそばにいるのだけれど、お母さんにずっと付き合って起きてるのは疲れます」と吐露されたのでした。
この次女の思いを、ご本人、ご主人、そしてお姉さんがどう受け止めるのか。訪問看護師は、ご主人やお姉さん、そしてご本人の思いにも心寄せていくのでした。
登壇した講師陣の自然体の演技に、会場ではときおり笑いが起こる中、ひとり一人の思いに触れて涙する参加者もいました。
以下の動画は最後の方の場面です。ご主人が今夜は次女さんを寝かせてあげようと話しています。ご本人も納得されている様子で、子供たちに対する愛情があふれる場面が展開されています。
「何かあったら訪問看護師が駆けつけてくれる」。こうした安心感があってこそ、家族に支えられた自宅療養が可能になることを伝える場面でもありました。
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