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夫は無口、主治医は妻の声を聴くだけで

更新日:4月12日

 メッセンジャーナースの活動の紹介です。医療総合媒体の日経メディカルで、連載「患者と医師の認識ギャップ考」を展開していました。日経BPの了承が得られましたので、シリーズで掲載していきます。


 第3回は、吉田和子さん(メッセンジャーナース認定 協会会長)の記事です。テーマは「夫は無口、主治医は妻の声を聴くだけで」です。


夫は無口、主治医は妻の声を聴くだけで


吉田和子(メッセンジャーナース認定 協会会長)

2016/08/02


 病いにある本人の声を聴く。当たり前のことのようですが、家族や周りの人の声の方が主となり、本人は辛さを引きずってしまうことがあります。今回紹介するのは、無口だった人が、初めて医師に自分の辛さを伝えたことで、苦痛の緩和につながることができた事例です。


 5月初旬に「夫のことなんですが」と電話が入り、その話しは次のようなことでした。


 「今年早々に心臓発作を起こし、今は薬を服用しています。3月に脳神経症状のため頭の検査を受けたところ、数個の斑点が見つかりました。その内の1個は手術が必要との説明。その後に全身の痙攣があり、再度の検査で『神経の走行で手術は難しい。内服薬で経過を観ましょう』と言われました。そのため痙攣と腫瘍を小さくする薬も追加となりました。


 夫はというと、寝ていることが多く、夕方まで眠り、起きると異常な食欲で、手当たり次第、食べまくります。


 医師からは動くようにと言われ、私が促すものの起きようとしません。必要と言われた手術はできず、寝てばかりいる夫に腹も立つし……。心配なあまりセカンドオピニオンも考えていますが、先生には言い出し難いし……。どうしたら良いでしょう」。


 私は、話しの中の「痛い苦しいも言わずに寝てばかりいる」という言葉に、本当に眠いだけなのかしら? と気になりました。そこで「ご主人は眠くて寝ているのかしら? ダルくてダルくてという場合もあるけど」と尋ねました。


 「そういえば、夫が、このダルさは俺にしか分からないと言ったことがあります。でも私は、夫が精神的に落ち込み、ダルいと言っているのだと思い、見逃していました。先生に話すように夫に言ってみます」。こう言って電話を切られました。


 6月中旬になって再会した時、奥様は次のように話しました。


 「夫が診察の時、初めて自分で辛さを話したんです。先生も、それこそ初めて夫に色々と聴いて下さり、『薬の複合的な作用では』とのことで処方を調整されました。


 お陰様で今は食欲も減って、ダルさも少し楽になったそうです。頭の斑点も幾らか小さくなったとのことで、ホッとしています。


 夫は無口なため、いつも妻の私が話し、先生も私に聴くことが多く、当の本人を取り残していたと反省しています」。


 患者本人の声を聴かずにいることで、家族そして医療者ともギャップを生じ易くなります。相談に応じる側に「患者への寄り添う気持ち」がありさえすれば、患者と家族、そして医療者を繋ぐ懸け橋になれることを実感した事例でした。


■著者プロフィール吉田和子(よしだかずこ)。元・秦野赤十字病院看護部長。現在、一般社団法人よりどころ・理事、メッセンジャーナース認定協会会長。現在は、元患者・家族友人、知人および、その紹介者の方々の相談を受けている。


日経メディカル Online 2016年8月2日掲載

日経BPの了承を得て掲載しています

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